撮影日記


2017年03月03日(金) 天気:くもり

さいごの「可部」行き

新幹線の路線が伸びる一方で,都市部を除いた地域では,鉄道路線の廃止が相次いでいる。鉄道路線が廃止されるおもな理由の1つには,社会情勢の変化で利用者が減少し,採算がとれなくなったというものがある。とくに,国鉄がJRに転換する時期には,多くの路線が廃止されている。
 可部線は,国鉄時代に「三段峡」駅まで延伸された。国鉄時代に廃止されることはなかったが,「三段峡」駅より先の延伸工事は,ストップした。JRになって以後,電化されていた「可部」駅までの区間では利用者が増加傾向にあり,あたらしい駅が設置されたり,増便もおこなわれたりした。しかし,電化されていなかった「可部」駅より先の区間の利用者は減少傾向にあり,電化されていなかった区間は2003年に廃止された(2003年11月30日の日記を参照)。
 廃止された区間のうちでも,「可部」駅のつぎの「河戸」駅までは周囲が市街地になっており,住宅や公共施設も多くある。それを背景に以前から,「河戸」駅まで電化区間を延伸してほしい,という要望が地域から出されていた。

Nikon F-301, Ai NIKKOR 35mm F2S, EB (2001年4月14日撮影)

このときはその要望が受け入れられることなく路線は廃止されたが,その後に,電化区間の延伸が決定される。その結果,いちどは廃止になった区間が「復活」する,という形になったのである。「復活」するのは,廃止された区間のごく一部分にすぎない。それでも,JRには廃止になった路線が「復活」するという前例がなかったという点から,注目されてきた。
 「復活」の日は,明日(2017年3月4日)である。

SONY DSC-P10 (2011年3月5日撮影)

いま,可部線の終着駅は「可部」駅である。明日からは,「可部」駅は終着駅ではなくなる。「可部」行きとして運転されているすべての列車は,明日からはあたらしく開業する「あき亀山」行きとなる。すなわち,「可部」行きの列車を見ることができるのは,今日までだ。
 そこで,さいごの「可部」行き表示を見送ることにした。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

駅の案内表示が,少しおかしいことになっている。
 「可部」行きが2つ並んで表示される,さいごの機会を目撃しようと考えたのだが,さいごの「可部」行きとなるべきところが,白紙表示になっている。しかも,到着する列車が「0両」とは,どういうことだ?
 最終列車が運転されないなどという事情ではなく,ただの表示上のエラーだとは思うが,どういう事情があるのだろうか。
 以前にも,これに似た現象を見たことがある。そのときは工事の関係で列車の運転が途中で打ち切りになるため,ふだんはありえない行き先(「古市橋」および「下祗園」)を表示しているときだった(2016年2月27日の日記を参照)。少し不思議であり,残念な表示内容である。

つぎに,横川駅の表示を見に行く。
 さいごの「可部」行き列車が「横川」駅を発車するのは,日付が3月4日にかわった後の,0:10である。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

「横川」駅の表示は,問題なかった。しかし,感度をISO400相当までしか設定できないKodak DCS Pro 14nでは,流れる文字を写し止められない。しかも,用意してきたレンズが明るいものではなく,シャッター速度を速くできないのだ。
 なお,「この可部行きは最終列車です」とあるのは,「今日で可部行き列車がなくなる」ことを意味しているのではなく,単に今日の可部線最終列車であることを意味している(はず)。

PENTAX K100D, SMC PENTAX-M 50mm F1.7

そこで,試し撮り中のPENTAX K100Dでも,撮っておくことにする。こちらは高感度に設定できるうえに,明るいレンズを用意していたので,じゅうぶんに写し止められる。撮影時の色に関しての設定が初期設定値のままであるためか,発色は少々不自然なものに感じられる。「いや,これがPENTAX K100Dの色なのだ」ということであれば,それを前提につきあっていこう。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

ともあれ,さいごの「可部」行き列車を見送ろう。
 明日からは「あき亀山」行きの列車を見ることになる。
 規模や経緯がどうであれ,いちどは廃止された鉄道路線が復活するのである。明日は,歴史上,重要な日になるのだ。


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