撮影日記


2015年09月18日(金) 天気:晴

特別仕様のFinePix S2 Pro その意図は永遠の謎か?

このたび入手したFUJI FinePix S2 Proの機能をたしかめているとき,大きな疑問にぶつかった。画質の設定が,取扱説明書(*1)の内容と異なっているのである。
 取扱説明書では,記録する画質のクオリティを「N」「F」「H」の3段階に切り替えることができるとある。

FinePix S2 Pro 使用説明書 (富士フイルム株式会社)

▲FinePix S2 Pro 使用説明書(p.71「クオリティー」)を参照

「N」は「NORMAL」をあらわしており,「JPEG 標準圧縮(標準画質)」で記録される。
 「F」は「FINE」をあらわしており,「JPEG 低圧縮(高画質)」で記録される。
 「H」は「HIGH」をあらわしており,非圧縮の形式で記録される。記録形式は,別の設定メニューで「TIFF」または「RAW」を選択できる。
 取扱説明書によれば,「通常は”NORMAL”で十分な画質が得られます」とされているが,心情としては少しでも高画質で記録しておきたい。だからといって,「TIFF」では1枚あたりの画像データがあまりにも大きいし,「RAW」では専用のソフトウェアを使っての「現像処理」が面倒である。そこで,間をとって「F」で記録したいと考える(Nikon D70にあるような,RAWとJPEGの同時記録といった機能は用意されていない)のであるが,なぜか「F」が設定項目にあらわれない。「N」の次は「F」ではなく「H」になり,その次も「F」ではなく「B」が表示される。「N」「H」「B」の3段階になっているのだ。

「N」よりも「B」のほうが記録可能な枚数が多いので,「B」は低画質モードであろう。おそらく「B」は「BASIC」をあらわしており,「JPEG 高圧縮(低画質)」で記録されていると思われる。ではなぜ,このFinePix S2 Proが「N」「F」「H」ではなく,「N」「H」「B」になっているのだろうか?
 まずは,どこかに「設定変更」のメニューがあるのではないか,と考えた。実際にFinePix S2 Proでは,記録する画像のクオリティ「H」(HIGH)については,別のメニューで「TIFF」にするか「RAW」にするかを変更できるのである。しかし,カメラのあらゆるボタンを操作しメニューを参照しても,クオリティの選択肢を「N」「F」「H」にするか「N」「H」「B」にするかを選択することに関わるような項目が見つからない。あらためて取扱説明書を読んでみても,クオリティに関する説明は,「N」「F」「H」のみで,「B」というものがない。
 それならば「隠しコマンド」のようなものがあるのではないかと考えて,FinePix S2 Proについて語られているWebページ等を検索してみるが,関係しそうな情報がまったく得られない。

FinePix S2 Proについて検索しているなかで,この機種が過去に不具合の問題を起こしていることがわかった。それに対してメーカーが,2回ほど対応をおこなっていたようである。
 1回目は2002年12月に発表されたもので,「電池の抜き差しにより、極めて稀に、設定が変化したり、背面並びに上面表示パネルに誤表示をしたり、最悪の場合にはファインダー内および上面表示パネルに"Err"が表示され、カメラの使用ができなくなります。」(*2)というものである。2回目は2005年10月に発表されたもので,「CCD製造工程上の理由で一時期品質にばらつき」があることにより「撮影した画像が真っ暗になる、色が紫色になる、乱れるなどの異常が発生します。」(*3)というものである。
 これらの不具合が懸念される製品のシリアルナンバーは,以下のものであることが公開されている。

FUJIFILM FinePix S2Pro 不具合が懸念される製品のシリアルナンバー
1回目の不具合 (2002年12月) 2回目の不具合 (2005年10月)
 23006461〜23006560
 24000001〜24000440
 24010001〜24010279
 24010293〜24010297
 24010302〜24010304
 24010334
 24010336〜24010484
 24010489〜24010500
 24010505〜24010508
 24010521〜24010524
 24010530〜24010532
 310110xx〜310115xx
 320000xx〜320008xx
 330000xx〜340001xx

では,このたび入手したFinePix S2 Proは,上記の「不具合が懸念される」対象になっているのだろうか?カメラの底面にあるシリアルナンバーを見てみよう。

どうやら,対象外のようである。
 しかし,あまりに番号が違いすぎている。
 1回目の対象シリアルナンバーと2回目の対象シリアルナンバーとを見てみると,上2桁には「23」「24」「31」「32」「33」の5種類が存在することがわかる。私が入手したFinePix S2 Proのシリアルナンバーの上2桁は「31」なので,これらに含まれる。その次の3桁(3桁目から5桁目)を見ると,「006」「000」「010」「011」の4種類にまとめられる。その部分が私が入手したものでは「999」となっている。この数値は,「試作機」や「特別仕様機」を意味しているように思えるのだが,実際はどうなのだろう?
 ともあれこのままではクオリティの「F」が設定できないことに対する解決にはつながらないので,メーカーさんに問い合わせてみた。その結果,これは「特別仕様」であり,「F」を使えるように変更することはできない,ということが明らかになった。

低圧縮(高画質)記録の「F」が使えないかわりに,高圧縮(低画質)記録の「B」が使えるようになっている。これはなにを目的とした「特別仕様」なのかが気になるところだが,中古品として入手した旧機種についてのことなので,これ以上メーカーさんのお手を煩わせるのも気が引けるというもの。あとは,いろいろと想像することにしようと思う。
 まず,高圧縮記録はすなわち,1コマあたりのデータ量が小さくなるということである。1コマあたりのデータ量が小さければ,記録メディアを交換しなくても,それだけたくさん撮影結果を記録できる。たとえば,2MBのCFカードを使ったとき,「H」のTIFF形式の場合は54コマ,「H」のRAW形式の場合は150コマ,「N」の場合は873コマ,「B」の場合は2107コマの記録が可能となる(画像の大きさが4256ピクセル×2848ピクセルの場合)。たくさん記録したいなら,圧縮率を高くするよりも,記録画素数を少なくするほうが効率がよいと思われるが,記録画素数は少なくしたくないらしい。最高の画質である必要はないが,撮影した画像をある程度の大きさで使いたいという目的が想像できる。
 記録メディアを交換せずに大量の撮影をしたいという目的で使われ,かつ,高画質を追求しないが画像を大きく使う可能性があるという用途として考えられるのは,たとえばスポーツの報道がある。あるいは,修学旅行などの学校行事の撮影という用途も考えられる。しかし,FinePix S2 ProのベースになったNikon F80に,報道や学校写真での酷使に耐えられるだけの耐久性が確保されているだろうか?想像するだけでは,やはりよくわからない。
 というわけで,FUJI FinePix S2 Proにおけるこのような「特別仕様」のことや,シリアルナンバーのことについて,もしなにか御存じの方がいらっしゃれば,こっそり教えていただければ幸いである。

*1 FinePix S2 Pro 使用説明書 (富士フイルム株式会社)
http://fujifilm.jp/support/digitalcamera/download/pack/pdf/ff_finepixs2pro_mn_j100.pdf

*2 FinePix S2 Pro ご使用のお客様へのお詫びとご案内 (富士フイルム株式会社)
http://www.fujifilm.co.jp/fxs2proinfo.html (Internet Archive)

*3 FinePix A303,F410,F700,S2Pro をご愛用のお客さまへのお詫びとお知らせ (富士フイルム株式会社)
http://fujifilm.jp/important/20051003/


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