2015年03月15日(日) 天気:曇ときどき晴
衝撃! CR-P2のなかみはCR123A!?
昔のカメラは,絞りや巻き上げは手でおこない,シャッターはバネの力で動作していた。そのため,カメラに電池は必要なかった。その後,さまざまな自動化が進行するなかで,電池が必須のものとなり,巻き上げやピントあわせまでも電動でおこなうようになると,それなりの大容量の電池が必要になってきた。
ニコンの一眼レフカメラだけに限定して考えても,電池をまったく必要としないのは,露出計を内蔵しないNikon F,Nikon F2,Nikomat FSくらいのものだ。露出計が内蔵されるようになると,測光のために,小さなボタン電池を使うようになる。はじめのころはMR-9などの水銀電池,後には酸化銀電池SR44(アルカリマンガン電池LR44でもいちおう動く)が使われるようになった。
ニコマートFTやニコンFMなどの機械制御シャッターをもったカメラでは,電池は露出計のためだけに使われる。シャッターは電池と無関係に動作するので,電池がなくても撮影は可能である。ニコマートELやニコンFEのようにAE(自動露出)が使えるカメラでは電子制御シャッターが採用され,電池がなければシャッターそのものが動作しないようになった。この場合は,電池がなければ撮影ができない。ただ,露出計やシャッターを動かすだけであれば,小さなボタン電池でもじゅうぶんに長い間,使いつづけることができていた。
状況が大きく動いたのは,カメラに電動式のワインダーが内蔵されたころである。ワインダーには大きな電力が必要となるので,容量の大きな単3型あるいは単4型の乾電池が使われるようになった。そしてほどなく一眼レフカメラはオートフォーカス化し,電池がなければうんともすんとも動かないものになっていった。
露出計やシャッターを動作させるだけであれば,せいぜい3V程度しか要求されなかった電池だが,ワインダーを内蔵させて以降は6V以上が要求されるようになる。6Vを得るには,単3型乾電池だと4本必要になる。単3型乾電池が4本というのは,かなりの体積になるし,かなり重くなる。そのせいか,重いことがセールス状のマイナスポイントになりうる中級クラス以下のカメラでは,リチウム電池が使われるようになったのだろう。
ニコンの一眼レフカメラに要求される電池をまとめると,つぎのようになる。
ニコンの一眼レフカメラ(ニコレックスシリーズを除く)に必要な電池
年 | 機種 | 電池 | 備考 |
1959 | Nikon F | 不要 | 各種フォトミックファインダには必要。 |
1965 | Nikomat FT | MR-9 1個 | 露出計にのみ必要。 |
1965 | Nikomat FS | 不要 | 露出計なし。 |
1967 | Nikomat FTN | MR-9 1個 | 露出計にのみ必要。 |
1971 | Nikon F2 | 不要 | 各種フォトミックファインダには必要。 |
1972 | Nikomat EL | 4SR44 1個 | AE |
1975 | Nikomat FT2 | SR44 1個 | 露出計にのみ必要。 |
1976 | Nikomat ELW | 4SR44 1個 | AE |
1977 | Nikomat FT3 | SR44 1個 | 露出計にのみ必要。 |
1977 | Nikon EL2 | 4SR44 1個 | AE |
1977 | Nikon FM | SR44 2個 | 露出計にのみ必要。 |
1978 | Nikon FE | SR44 2個 | AE |
1980 | Nikon F3 | SR44 2個 | AE |
1980 | Nikon EM | SR44 2個 | AE |
1982 | Nikon FM2 | SR44 2個 | 露出計にのみ必要。 |
1982 | Nikon FG | SR44 2個 | AE |
1983 | Nikon FE2 | SR44 2個 | AE |
1983 | Nikon FA | SR44 2個 | AE |
1984 | Nikon New FM2 | SR44 2個 | 露出計にのみ必要。 |
1984 | Nikon FG-20 | SR44 2個 | AE |
1985 | Nikon F-301 | 単4型 4個 | AE,ワインダー |
1986 | Nikon F-501AF | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー |
1987 | Nikon F-401 | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
1988 | Nikon F-801 | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー |
1988 | Nikon F4 | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー。F4S,F4Eは6個使用。 |
1989 | Nikon F-401S | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
1990 | Nikon F-601 | CR-P2 1個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
1990 | Nikon F-601M | CR-P2 1個 | AE,ワインダー,フラッシュ |
1991 | Nikon F-801S | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー |
1991 | Nikon F-401X | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
1992 | Nikon F90 | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー |
1994 | Nikon F50D | 2CR5 1個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
1994 | Nikon F90X | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー |
1994 | Nikon F70D | CR123A 2個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
1995 | Nikon FM10 | SR44 2個 | 露出計にのみ必要。 |
1996 | Nikon F5 | 単3型 8個 | AE,AF,ワインダー |
1997 | Nikon FE10 | SR44 2個 | AE |
1998 | Nikon F60D | CR123A 2個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
1998 | Nikon F100 | 単3型 4個 | AE,AF,ワインダー |
2000 | Nikon F80 | CR123A 2個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
2001 | Nikon FM3A | CR-1/3N 1個またはSR44(LR44) 2個 | AEおよび露出計にのみ必要。 |
2001 | Nikon U | CR2 2個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
2002 | Nikon Us | CR2 2個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
2003 | Nikon U2 | CR2 2個 | AE,AF,ワインダー,フラッシュ |
2004 | Nikon F6 | CR123A 2個 | AE,AF,ワインダー |
SR44やLR44型ボタン電池,単3型や単4型の乾電池は,100円ショップでも売られている。SR44なら1個100円(消費税別,以下同様)の場合が多いが,LR44なら2個100円,単3型や単4型の乾電池なら4本〜6本で100円という具合に,お手軽に購入できる。一方,カメラの主電源に使えるリチウム電池は,100円では扱われていない(かつて扱われているのを見たことがあるが,1個300円くらいだった)。カメラ店,電器店あるいはホームセンターなどで,1個数100円で購入することになり,少々,敷居が高い。また,おもに使うカメラにはいれっぱなしでよいのだが,たまにしか使わないカメラで電池を使いまわすには,種類がいろいろあるためにやや不便である。
そこで,違うサイズのリチウム電池を兼用するためのアダプタが工夫できないかと考えた。
まず,CR2とCR123Aは,どちらも3Vのリチウム電池である。CR2とCR123Aとはほぼ同じ太さで,CR123Aのほうが少し長い。これは簡単な継ぎ足しを工夫すれば,簡単に兼用できることになる。ニコンの一眼レフカメラでは,CR2やCR123Aを使うものが多い。CR2とCR123Aとが兼用できるようになれば,電池を使いまわせる範囲が大きく広がる。
違うサイズのリチウム電池が兼用できないかと考えたのは,Nikon F-601を見直したことによる(2015年3月1日の日記を参照)。Nikon F-601は,CR-P2というリチウム電池を使う。ニコンの一眼レフカメラでCR-P2を使うのは,Nikon F-601だけだ。だからこれは,なんとしてもCR2やCR123Aを使いまわせるようにしたい。
CR-P2とCR123Aとをくらべてみると,その高さや厚みが似ているように感じる。実際,CR123Aの高さは34.5mmで,CR-P2の高さは36mmであり,その差はわずかに1.5mmである。また,CR123Aの直径は17mmで,CR-P2の厚みは19.5mmで,その差は2.5mmである,また,CR-P2の幅は35mmで,CR123Aの直径の2倍よりも1mm広いだけである。つまりCR-P2の大きさは,2個のCR123Aを並べたものの大きさによく似ているのである(*1)。
CR-P2をあらためて眺めてみると,+端子や−端子の位置が,2個のCR123Aを並べたものの位置と同じであるように見える。CR-P2のなかみを取りだせば,残った殻をアダプタに利用できるのではないだろうか?
しかも,貼りあわせた境目のような筋も見えるので,カッターナイフで切れ目を入れてみた。
すると,CR-P2のなかからは,CR123Aとほぼ同じような2個の電池が出現したのである。
実際に,この殻にはCR123Aがぴったり入る。
だから,適当な厚紙工作でスペーサーをつくってやれば,CR2を使うこともできるのだ。
このようにすることで,本来であればCR-P2を使うNikon F-601を,2個のCR2で使うことができたのであった。これでますます,CR2型の充電式電池の使い道が広がるというものである。なお,この記事は,電池の分解を推奨するものではない。電池の分解は危険をともなうことがあるので,あくまでも自己の責任においておこなうこと。
*1 CR系円筒形リチウム電池|電子デバイス・産業用機器 (パナソニック株式会社)
→http://industrial.panasonic.com/jp/products/batteries/primary-batteries/lithium-batteries/cylindrical-type-lithium-batteries-cr-series?reset=1
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