2014年9月29日(月) 天気:晴れ
「Nikon F3」は,「エフスリー」か?「エフさん」か?
「ニコン」といえば,高級一眼レフカメラを連想する人が少なくないだろう。1959年以来,ずっと「プロ用高級一眼レフカメラ」とされる製品をラインアップし続けているためだ。「プロ用高級一眼レフカメラ」としてはキヤノンの製品も有名であり,キヤノンのほうが高く評価されることも少なくない。だが,「プロ用高級一眼レフカメラ」とされるものをラインアップさせたのは,キヤノンよりもニコンが早かったこと,キヤノンには「キヤノネット」や「オートボーイ」など一般向け製品でも大ヒット商品があることなどから,ニコンのほうが「高級一眼レフカメラ」を連想しやすいのではないだろうか。
ニコンで「プロ用高級一眼レフカメラ」とされるものが発売されたのは,1959年である。1959年に「ニコンF」が発売され,1971年には「ニコンF2」,1980年には「ニコンF3」,1988年には「ニコンF4」,1996年には「ニコンF5」,そして2004年には「ニコンF6」へとモデルチェンジされてきた。その後は,ディジタルカメラが主流になったこともあり,「ニコンF6」の次のモデルはまだ発売されていない(そもそも,発売されるかどうか,わからないのだが)。なお,「ニコンF6」は,いまでも販売されている現行商品となっている(*1)。
さてここで,「撮影日記」をお読みいただいている方に,ちょっと問いたい。
問題 「ニコンF3」は,なんと読むだろうか?
正解は,「ニコンエフスリー」である。「3」を英語読みして「エフスリー」というのが,正式の商品名ということになっているそうだ。
さあ,あなたは,どう読んでいたかな?
「自分もエフスリーと読んでいたよ」という人も多いと思うが,「いや,自分はエフさんと読んでいる」という人もあるはずだ。私自身も「エフさん」と読むことが多いし,ほかの人が「エフさん」と読んでいるのを耳にすることが少なくない。
では,ほかの機種はどうか?「F」は「エフ」,「F2」は「エフツー」,ここまではほぼ全員がそう読むと思う。しかし私が気がついた限りでは,「F3」は「エフスリー」と読む人もあれば,「エフさん」と読む人もある。「F4」も同様に,「エフフォー」と読む人もあれば,「エフよん」と読む人もある。これが「F5」「F6」になると,「エフご」「エフろく」と読む人ばかりで,「エフファイブ」「エフシックス」と読む人にお目にかかった記憶がない。
なぜ,こういう傾向があるのだろうか?
あくまでも個人的な印象として語るが,「F3」が発売されたころは,「エフスリー」と読む人ばかりで「エフさん」と読む人はいなかったように思う。私も,「エフスリー」としか読んでいなかった。しかし,「F4」が発売されると,さいしょのころは「エフフォー」と読む人が多かったようだが,やがて「エフよん」と読む人があらわれたように感じている。このあたりから,英語読みにこだわらない風潮が生じた可能性があると思っている。
では,どうして,英語読みにこだわらなくなったのだろうか?
これもまた私の個人的な印象であるが,「エフフォー」はやや読みにくいように感じる。読みにくく感じるのは,「フ」が連続するせいかもしれない。実際に,発音してみよう。
Repeat after me.
「エフフォー」
「エフよん」
「エフフォー」よりも「エフよん」のほうが,読みやすく感じるのではないだろうか?はじめて「エフよん」という読み方を聞いたときには感じていたはずの違和感も,やがては読みやすいほうへなじんでしまうだろう。
「F4」が発売されているうちに英語読みにこだわらない風潮が定着したせいか,「F5」のときにはさいしょから「エフご」と読む人がほとんどで,「エフファイブ」と読む声は店頭のアナウンスくらいだったように感じたものだ。「エフファイブ」という読み方は,「フ」が連続すると同時に「ファイブ」が長いので,ますます読みにくいと感じられたのかもしれない。「エフよん」「エフご」という読み方が定着すれば,その次の「F6」が「エフろく」としか読まれないのは,当然の流れであろう。
数字部分を日本語読みする風潮が生じた理由は,ほかにも考えられる。
それは,普及機の名称だ。
ニコンの「プロ用高級一眼レフカメラ」とされる機種のうち,「ニコンF3」までの機種はマニュアルフォーカスのカメラだったが,「ニコンF4」以降はオートフォーカスの一眼レフカメラである(ここでは「ニコンF3AF」の存在は無視する)。最高級機種としてのオートフォーカス一眼レフカメラ「ニコンF4」を発売する前に,いくつかのオートフォーカス一眼レフカメラが発売された。ニコンからはじめて発売されたオートフォーカス一眼レフカメラは,1986年に発売された「ニコンF-501AF」である。このカメラの名称は,どう読まれていただろうか。「ニコンエフファインブハンドレッドワンエーエフ」と読む人は,少なくとも日本語のネイティブスピーカーのなかにはいなかっただろう。では,「ファイブオーワン」だろうか?いや,そんなことはない。日本語のネイティブスピーカーであれば,「エフごまるいち」あるいは「エフごひゃくいち」と読んだのではないか?前年(1985年)に発売された「F-301」も「エフさんまるいち」あるいは「エフさんびゃくいち」と読まれていたし,翌年(1987年)に発売された「F-401」も「エフよんまるいち」と読まれていた。だから,1988年に発売された「F-801」が「エフはちまるいち」と読まれるのは当然だし,「F4」が「エフフォー」ではなく「エフよん」と読まれるようになったのも,自然な流れなのである。そしてこのあと発売された「F90」は「エフきゅうじゅう」と読まれたし,「F100」は「エフひゃく」と読まれることになったのである。
「ニコンF3」は1980年に発売されて以後,2000年に販売終了がアナウンス(2000年8月31日の日記を参照)されるまで,販売期間が20年にわたるロングセラー商品となった。その間に「ニコンF4」「ニコンF5」の登場をはさんでいる。当初は「エフスリー」と読まれていた「ニコンF3」が,「F4」や「F5」の影響を受けて「エフさん」と読まれるようになったのも,これまた自然な流れなのであろう。幸いにも「F2」はこの流れの影響を受けていなかったことや,「エフに」だと短すぎて読みにくいと感じられるだろうから「エフツー」という読み方が主流になっているものと思う。
ただし,メーカーとしての正式な名称はあくまでも「エフ」「エフツー」「エフスリー」「エフフォー」「エフファイブ」「エフシックス」になっているとのことだ。
*1 F6 一眼レフカメラ (ニコンイメージング)
→http://www.nikon-image.com/products/slr/lineup/f6/
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