2014年1月19日(日) 天気:朝まで雪のち曇
ポジフィルムの像を見る魅力 リアリスト判のマウントをつくろう
どんな高級で高性能のカメラを使っても,得られる画像はあくまでも平面である。画像に立体感を与えるために,古くから「ステレオ写真」というものが工夫されてきた。「ステレオ写真」とは,右眼で見たものに相当する画像と,左眼で見たものに相当する画像とを撮影したものである。それぞれを右眼,左眼で見ることで,立体的に見えるようになる。これは,立体視と呼ばれる(左眼で見たものに相当する画像を左眼で,右眼で見たものに相当する画像を右眼で見る方法は「平行法」という)。
「ステレオ写真」を撮る方法はいろいろあるが,もっともシンプルな方法は,「ステレオカメラ」を使うことであろう。「ステレオカメラ」には,右眼に相当するレンズと左眼に相当するレンズがある。1回のシャッターレリーズ操作で,右眼で見たものに相当する画像と,左眼で見たものに相当する画像とを撮影することができる。
TAKARA-TOMY 3D ShotCam
これまでに何度も紹介したことのある,タカラトミーの「3Dショットカム」は,ステレオ写真を撮ることのできるディジタルカメラである。所詮はおもちゃであり不満点は数多いが(2013年1月2日の日記を参照),なによりも画質的にいまひとつ満足できないのが残念なところである。撮像素子の画素数は30万画素級のもので,ピント調整もできないのだから,その再現力にはおのずと限界があろうというもの。
そうは言っても,1回のシャッターレリーズ操作で,左右それぞれの眼で見たものに相当する画像が並んだ,1つの画像ファイルが出力されるようになっている。それをL判サイズで出力すれば,平行法で立体視ができるし,専用のビューワを利用すれば平行法の練習をしなくても簡単に立体視を楽しむことができるようになっている。このお手軽さはなににも代えがたいのだが,せっかくだからもう少し鮮明な立体画像を楽しみたいと思うのである。
フィルムで撮影することの魅力としては,いろいろなものが語られる。そのうち,私にとって大きな要因となっているのは,2点だ。
1つは,撮影した画像が,フィルムという物体に固定されていること。
物体に固定されているため,年月とともにその物体そのものが劣化するというデメリットはある。この点は,ディジタルデータとしての記録に大きく劣る。しかしディジタルデータとして記録されたものは,それを読みだすための装置がなくなったら,お手上げである。8mmビデオテープやDAT(ディジタルオーディオテープ)に記録した映像や音声の再生に苦慮している人には,こういう問題が実感できることだろう。映像や音声はこのような形でなければ経済的な記録ができなかったからやむを得ないとしても,比較的お手軽に使える静止画像の記録には,積極的にフィルムを使いたい。物質に画像が固定されていれば,多少の劣化はあろうとも,将来にわたってなんらかの形で画像を取り出すことができるはずだ。
もう1つは,とくにカラーポジフィルムに固定された画像のリアルさがもつ魅力である。たぶん,見えるところは見える,見えないところは見えないという感覚が自然なのではないだろうか。35mm判の小さな画面であっても,ルーペで拡大して見たときの,ほどよい鮮明さは1つの大きな魅力なのである。これに対してパソコンを通じてディスプレイに映し出された画像は,自由に拡大して見ることができるわけだが,あまり拡大しすぎると,不鮮明なまま画像が広がっていくだけである。ここに,ポジフィルムを直接に見るときとは違った不自然さを感じるのではないかと思う。
とかなんとか書いたが,そんな理由づけは,どうでもいいことだ。
「ステレオカメラ」としては,「リアリスト判」とよばれるものが,ポピュラーな存在だった。リアリスト判は,135フィルム(パトローネ入り35mmフィルム)に,23mm×24mmの大きさで写しこまれるものだ。かつてはポジフィルムで撮影したものを,1コマずつ切り離して専用のマウントに固定し,ビューワで鑑賞するようになっていた。しかしながらリアリスト判のマウントサービスは,2000年に終了してしまっている。そこで私は,1コマずつスキャンして配置し,L判サイズで出力して平行法で見るようにしていた(2008年11月16日の日記を参照)。L判サイズなら,家庭用プリンタでも写真店のプリントサービスでも,お手軽に出力が可能である。また,平行法で見るのにちょうどよい大きさでもある。
この方法の場合,出力はお手軽だし見るのもお手軽なのだが,1コマずつスキャンして配置するというのは少々面倒である。また,ポジフィルムを直接に見るときの魅力も捨てがたい。リアリスト判のマウントが入手できないのなら,作るしかない。私は,ほんもののリアリスト判のマウントを見たことがないから,大きさなどは自分で勝手に決めることになる。
平行法で立体視するときは,一対の像の間隔が,一般的な両眼の間隔であるおよそ7cmになっているとよいされれる。リアリスト判の1コマの幅は23mmだから,2つのコマを4〜5cmくらい離して並べるようにすればよいことになる。両側に余白を1cmくらいとるとすれば,全体の幅は110mmくらいになる。高さはフィルムの幅である35mm以上あればよく,2つ折りにしてフィルムを挟むためには70mm以上必要ということになる。
マウントの材料としては,ほどほどの厚さの紙を使いたい。少しでも楽に作るために,フィルムの窓を開ける以外は,紙を切るなどの工作をできるだけしないようにしたい。このような目的にちょうどよい大きさ厚さの紙として,100円ショップで見つけた「私製はがき用紙」を使うことにした。
次のような位置に窓を開けて2つ折りにすれば,リアリスト判のマウントとして手ごろなものになりそうである。
これをプリンタで「私製はがき用紙」に出力し,カッターナイフで窓を開ければ,マウントになる。
リアリスト判で撮影したポジフィルムを1コマずつ切り離し,マウントに糊をつけて貼りあわせれば,完成だ。
このようにして作ったマウントは,ほんもののリアリスト判のマウントとは(たぶん)サイズが異なるであろう。だから,専用のビューワも利用できないと思う。だが,心配無用。この大きさなら平行法で簡単に立体視できるし,10倍程度の安いルーペを2つ用意して見れば,楽に立体視できるだろう。
なお,このフィルムはKODAK Stereo Cameraを入手して間もないころに撮影したものである。そう,さいしょはポジフィルムで撮影したのだ。しかしマウントサービスが受けられないことから,以後はポジフィルムではなくネガフィルムで撮影し,スキャンしてプリントすることにしたのである。
写っているのは,平和祈念公園の「原爆の子の像」の周囲である。ここには,以前から多数の折り鶴が捧げられている。いまは折り鶴をお供えするためのケースが設置されているが,かつてはこのように周囲に積み上げられていたものだ。折り鶴を供えるためのケースは,放火等の事件が相次いだことから2002年に設置されたものである。
KODAK Stereo Camera, Kodak Anaston Lens 35mm F3.5, EB
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