撮影日記


2013年12月14日(土) 天気:晴れときどき雪

OM77AFとは!?
オリンパス唯一のオートフォーカス一眼レフカメラは
OM707ではないのか?

広島は瀬戸内海に面した温暖な土地,というイメージをもつ人も少なくないかと思う。たしかに,広島県内にはそのようなイメージに合致するところもあるだろう。また,広島県内でよく知られた街は,沿岸部にあるものが多い。だがあくまでもそれは,沿岸部や島嶼部などごく一部であり,広島県の大半はむしろ山地であると考えていただきたい。とくに広島市は,ぐっと奥まった広島湾に流れこむ太田川がつくった三角州上に広がる街であり,三角州の奥はすぐに山沿いである。広島市は太田川に沿って,内陸部へも広がっている。だから,同じ広島市内でも,場所によって天気が大きく違うことがある。たとえば,広島市の北にある北広島町の「八王子よみがえりの水」付近では激しく雪が舞う状態だったが,広島市内になる鈴張小学校あたりまで戻ってくると雨にかわっており,さらに山を下って可部の市街地に入るころにはその雨も小止みとなる。さらに太田川橋を渡って安佐南区に入れば,その雨も止んでいる。こういうのは,よくあることだ(2008年2月9日の日記を参照)。

雨も小止みになったあたり,国道191号線沿いに「カメラのキタムラ 可部店」がある。ここは広島市内の「カメラのキタムラ」のなかで,高取店とならび,ジャンクカメラの扱いが比較的充実しているお店だ。今日はなぜか,ミノルタSR-1や,キヤノンFXなどが多数ころがっていた。ミノルタSR-1は,前期型や後期型などいくつかのバージョンに分類できる(2009年9月8日の日記を参照)。これだけミノルタSR-1があれば,いろいろなバージョンのものが見つかるかもしれない。じっくり比較し未入手のバージョンをさがしだしてみようかと思ったのだが,私はそれとは違うカメラが気になってしかたなかった。

オリンパスが発売した唯一のオートフォーカス一眼レフカメラ「OM707」は,「失敗作である」という評価をよく耳にする。メーカーの開発者がいっしょうけんめい考えてつくった製品に対して,一介のシロートが「失敗作」という評価を与えるのも甚だ失礼なことではある。しかし,どうしても「失敗作だろ,これは」と言いたくなるような製品,それが「OM707」である。これを「失敗作ではないか?」と言いたくなる理由は,なんといっても「やりたいことができない」ことだ。いや,「写真をきれいに写す」というだけなら,「OM707」はまったく問題のないカメラである。オートフォーカス一眼レフカメラとしては初期のものなので,最近の製品にくらべればそのあたりの性能が劣っているように感じるのは事実だ。だが,同時代のほかの機種とくらべて,著しく劣るようなものではない。当時としては,じゅうぶんに実用的なレベルである。レンズの性能も,他社の製品にくらべて決して劣るものではない。むしろ,高く評価する意見すら見られる。シャッターレリーズボタンを押すだけで,きれいな写真が得られる。そういう意味では,優れたカメラだ。
 しかし,シャッターレリーズボタンを押す以外,ほとんどなにもできないのである。まず,露出の問題。OM707は,プログラムAE専用のカメラになっている。プログラムシフト(露光量を保ったまま,シャッター速度と絞りの値を変える機能)があるので任意のシャッター速度や絞りをある程度は選べるのだが,露出補正機能がないので,意図的にアンダーにしたりオーバーにしたりできない。致命的なのは,マニュアルフォーカスが困難であることだ。オートフォーカスでは意図するところにピントがうまくあわないときなど,マニュアルフォーカスを使いたい場面は必ずある。しかしOM707には,レンズのフォーカスリングを手で動かしてピントをあわせるモードが用意されていない。もちろんレンズには,ちゃんとしたフォーカスリングなどない。一般的なマニュアルフォーカスのかわりに用意されているのは,カメラボディ背面にあるスイッチで少しずつモーターを回してピントを調整する「パワーフォーカス」と称する機能である。しかしこれが,すこぶる使いにくいものなのである。
 OM707は,マニュアルフォーカスのOMシリーズ用レンズを「絞り優先AE」「マニュアルフォーカス」で使うことができる。絞り優先AEやマニュアルフォーカスでじっくりと撮影したいときは,マニュアルフォーカス用のOMレンズを使用し,プログラムAEとオートフォーカスで気軽に撮影したいときは,オートフォーカス用のレンズを使えばよい,そういうコンセプトのカメラなのかもしれないが,そのコンセプトがきちんと伝わる製品になっているであろうか。マニュアルフォーカスのOMレンズを使うとき,ファインダー内にシャッター速度が表示されないことを考えれば,やはり使う人がなにを「やりたい」と考えているのかが,じゅうぶんに理解されていないのではないか?と思わざるを得ない。
 その後,OM707の後継機となるレンズ交換式オートフォーカス一眼レフカメラは発売されず,結局これが,OMシリーズとして,オリンパスとして唯一のレンズ交換式オートフォーカス一眼レフカメラとなったのである。商売としては,「失敗」だったのだろう。

そうは言ってもOM707は,それなりの数が流通した。その証拠に,中古カメラ店でその姿を見かけることは,決して少なくない。ただ,中古カメラ店でもとくによく見かける場所は,ジャンク品のコーナーである。私が見るかぎりOM707の大半は,電池ボックスのふたが破損している。この点については「欠陥」とよばれてもしかたないのでは?と思うほど,そこが壊れている。私がずっと以前に入手したOM707も,やはり電池ボックスのふたが破損したのか,ふたそのものが失われていた。しかし電池を入れて接点をつないでやると,ちゃんと動作し撮影も可能なものであった(2005年3月21日の日記を参照)。
 すでに入手しているOM707が気になったのは,これには破損しているものの,電池ボックスのふたが残っていたためである。

これなら軽くテープで留めておくだけで,じゅうぶんに使うことができる。
 もう1点,このカメラが気になった理由。よく見ればこれは,「OM707」ではなかったのだ。

本来「OM707」と書いてある位置に,「OM77AF」と書いてある。OMシリーズのオートフォーカス一眼レフカメラは,OM707だけのはずだ。ではこのOM77AFとは,いったいなにか?答えは簡単で,OM707の「輸出仕様」は「名前」が違えてあった,ということだ。名前は違うが,同じものということである。ミノルタSR-1のバージョン違いとは異なり,名前が違うだけではあるが,バージョン違いを集めてみるのもおもしろいじゃないか。少なくとも,電池ボックスのふたは,大きな収穫である。


← 前のページ もくじ 次のページ →