2011年12月19日(月) 天気:晴
チープな一眼レフカメラを楽しもう メプロゼニットとメプロコミナー
カメラやレンズがたくさん集まってくると,「使うことのない」ものも増えてくる。とても申し訳ないことであるが,自分ひとりで使える台数には限りがあるので,どうしても使わないものが出てしまうのだ。カメラやレンズは,使ってナンボ,写真を撮るために使うことではじめて,その存在価値がある。使わずに死蔵することは,カメラやレンズに対して,とても申し訳ないことだ。それはわかっているのだが,カメラやレンズを増やすことはやめられない。
使わなくなったレンズの1つに,「MEPRO KOMINAR 55mm F2.8」というレンズがある。「KOMINAR」とは,長野県にある日東光学というメーカーのブランドだ。このレンズには,「KOMINAR」に加えて「MEPRO」という名称がついていることからもわかるように,旧ソ連製の一眼レフカメラ「メプロゼニット」(MEPROZENIT)用のレンズである。
「メプロゼニット」は,1970年ころにスーパーマーケットのダイエーから,1万円くらいという低価格で発売された一眼レフカメラだ。標準レンズ付きの一眼レフカメラが1万円というのは,当時としても驚異的な低価格である。当時,低価格を大きなセールスポイントとしていた一眼レフカメラのメーカーとしてペトリがある。そのペトリの製品のなかでも,とくに低価格をセールスポイントにしていた「ペトリV6F2」は,日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」(vol.32, 1968年)によれば,55mm F2レンズ付き,露出計なしで23800円である。およそ1万円という価格がいかに驚くべきものか,ご理解いただけるであろう。
「MEPRO KOMINAR 55mm F2.8」は,M42マウントのプリセット絞りのレンズである。小口径レンズであり,かつ,プリセット絞りなので,決して使い勝手のよいものではない。また,最短撮影距離は0.8mで,接写に好都合というわけでもない。ただ,とてもコンパクトなレンズであるというのは,大きな利点だ。だから,気持ちのよい描写を示してくれれば,愛用するレンズの1つになっただろう。しかし,実際にこのレンズを使ってみたところ,背景のボケが非常に煩わしく感じられたのである。
Vivita XC-3, MEPRO KOMINAR 55mm F2.8, S-100
最近,twitter上で,このレンズのことを話題に出した人がいた。その人によれば,さびれた街を撮るのには,とてもよく似合うとのこと。この年末年始は,「MEPRO KOMINAR 55mm F2.8」で遊んでみることにしよう。
以前に使ったときは,Vivitar XC-3というCOSINA製のカメラとの組み合わせだったが,今回は,本来の組み合わせである「メプロゼニット」で使ってみよう。カメラもレンズも,長く使っておらず,申し訳なく思っていたところだ。
私のてもとにある「メプロゼニット」は,「MEPROZENIT E」というモデルだ。シャッター速度は1/30秒〜1/500秒までと,かなり限定的なものであるが,日中の屋外で使うには,十分な幅をもっているといってよいだろう。絞りやシャッター速度には連動しないが,露出計も内蔵されている(ただし,いまは,この露出計は信用できる状態ではない)。
スペック的には物足りない面もあるし,精密機械としての魅力も薄い。チープなカメラだが,それに反して手に持つとずっしり重い。さあ,メプロゼニットとメプロコミナーとで,どんな写真が撮れるだろうか。
ところで,「チープ」という言葉を,辞書で引くと,「安い」「安っぽい」「安価」という意味が出てくる。「安い」「安価」という言葉には,客観的な事実を示すだけであるとともに,「コストパフォーマンスがよい」という意味が含まれてくる。しかし,「安っぽい」という言葉には,「粗悪な」というニュアンスが含まれてくる。英語の辞書も引いてみれば,やはり「コストパフォーマンスがよい」という意味と「粗悪な」という意味とが同居している。だから,単に価格が安いという事実を述べるのであれば,cheapではなくinexpensiveを使うのがよいとのことだ。あるいは,low priceか。「粗悪な」と,はっきり言うならば,inferiorやpoor qualityなどが使える。
「チープ」とは,実に便利な単語ということだ。
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