撮影日記


2011年03月31日(木) 天気:晴

サマータイムについて考える

自宅から,昔なつかしの「アメリカンヨーヨー」が出てきた。これが大流行したのは,たぶん35年くらい前のことではないかと思う。できる人にはいろいろな「技」ができるわけだが,元来,器用ではない私には,とてもそんな「技」などまねできない。いま,あらためて手にしてみても,やはりなにもできそうにない。

このたびの震災の影響で,東京電力の管内では電力の需要に供給が追いつかない状態になっている。夏になるとエアコン等が稼働するようになることから,ますます電力不足が深刻になることが懸念されている。そこで,「サマータイム」の導入を提案する意見も出つつあるようだ。
 「サマータイム」とは,夏季には時計の針を1時間進めて,長い昼間を余暇のために有効に使おうという制度である。北アメリカやヨーロッパでは,多くの国でこの制度が実施されているが,アジアやアフリカでは,かつて実施していた国もあるものの現在は多くの国がサマータイムを実施していない。日本も,かつてサマータイムを実施したことがあるが,現在は実施されていない。
 さて,日本でサマータイムが実施されていたのはいつだっただろうか。また,それはなぜ,実施しなくなったのだろうか。
 そんなことを書いていた記事があったはずなので,古い雑誌を捜索した。冒頭の「アメリカンヨーヨー」は,そのときにたまたま見つかったものである。

さがしていた記事は,「サマータイムと気象」(朝倉正,日本気象協会発行「気象」1989年8月号)という,3ページほどの読み物である。それによると,日本でサマータイムが実施されていたのは,1948年から1952年までの4年間であるとのこと。また,サマータイムが廃止された理由としては,「過労」「睡眠不足」「子どもが寝つかない」などをあげている。余暇を有効に使うための制度のはずが,過労につながってしまうようでは,困ったものである。また,この記事の執筆者は,「サマータイムは亜寒帯の大陸性気候の地域に適していると思われるが,亜熱帯の海洋性気候の地域には適さないのである」という意見を加えている。ヨーロッパや北アメリカの国々でサマータイムが定着しているのは,少なくとも夜は,日本よりも涼しいということが重要な要因なのである。
 経済産業省資源エネルギー庁発行の「エネルギー白書」では,日本国内でのエネルギー消費を「産業部門」「民生部門」と「運輸部門」の3つにわけて分析している。さらに「民生部門」は,「家庭部門」と「業務部門」とにわけられている(*1)。「エネルギーバランス表 2009年速報(簡易表のみ)」(*2)には,エネルギー消費としての電力は931354×106kWhとある。そのうち,家庭用は286016×106kWhであることから,国内の電力消費の約30%が家庭用であるように読み取ることができる。表の読み取り方がこれでよいのであれば,家庭での電力消費量は,けっこう多いことがわかる。各家庭でのこまめな節電も,トータルではかなり大きな効果につながることが期待できるというわけだ。
 さて,もしサマータイムが実施されるとどうなるだろうか。
 時計を1時間進めるということは,一般的な企業の終業時刻である17時ころが,現在の16時ころに相当することになる。暑さのピークを過ぎているとはいえ,まだとても暑いときだ。そんな状態のところに帰宅すれば,どうしたってエアコンを使いたくなるだろう。そこにくわえて,そろそろ夕食の準備である。これらが重なれば,ピークの消費電力はどうなることか?
 サマータイムの実施は,「余暇の時間を有効に使う」こと,それによって「消費をうながし経済を活性化させること」の効果は,たしかに期待できるのかもしれない(余暇の消費につながらず,過労につながる可能性もあるわけだが)。しかしながら,いま直面するかもしれない電力不足の問題には,それを解決するどころか悪化させるはたらきしかしないように思われるわけである。もし,電力不足の問題を解消させるためにサマータイムを実施するなら,一般的なサマータイムとは逆に,時計を1時間あるいは2時間遅らせるのはどうだろうか。そうすれば,一般的な企業の終業時刻である17時ころは,そろそろ日没の,実際の18時や19時ころに相当することになる。多少は,暑さもやわらいでいることだろう。そして,エアコンの使用量が少なくなれば,都市部の夜の暑さは,さらにやわらぐことになるのではないだろうか……

それでもなお,日本の夜は,暑いかもしれない。

*1 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010energyhtml/2-1-2.html

*2 http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/jukyu/result-2.htm


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