撮影日記

2016年10月09日(日)　天気：雨のち曇

伊勢で「チェキ」モノクロームを使う

早朝，ホテルで目を覚ます。

昨夜からの雨は，まだ続いているだろうか。
　カーテンをあけて，ようやく薄明るくなってきた外を眺める。驚いたことに，目の前に大きな滝が見える。昨夜は，まったく気がつかなかった。ここはほとんど海沿いの場所，山もさほど深くないはず。その山のサイズにみあわぬ，じつにみごとな滝が見える。

なんという絶景だろうか，これを撮らない手はない。
　カメラを取り出す。
　まずはよく見ようとメガネをかけると，…

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

…，なんだよ。道路じゃないか！(笑)

見えている道路は，まず下っているようで，途中からこう配がゆるやかになっているようだ。もしかすると，少しは上っているのかもしれない。ともあれ，手前が大きく下り坂になっているため，とてつもない長い急こう配の上り坂に見えるのである。雨はまだ激しく，道路はよく濡れている。空はまだ明るくないこともあり，ぼんやりと見える。しかも，メガネをかけていなかった。これらの要因が複合して，ただの道路が大瀑布に見えたのであった。
　そこを通る自動車の数は少なく，たまに小さな赤いテールランプが上昇していくのが見える。自然の風景ではないが，これもちょっとした見ごたえのある景色だ。

午前中の予定は，伊勢神宮の参拝である。
　雨はまだ激しいが，天気予報ではお昼前くらいからは「くもり」になるというので，そのときが少しでも早く訪れることを期待する。ともあれ，案内の人に連れられての参拝は，結局，雨の中。風も強く，撮影どころかカメラを濡らさないことに気をつける必要がある状態だ。
　ようやく雨がやんできて，なにか撮ってみようという気になったのは，ひと通りの参拝を済ませて，ひと一息ついた後のこと。今日，いちばん使いたいカメラはErnemann HEAG 0，フィルムはもちろん，入手したばかりの「チェキ」モノクロームである(2016年10月7日の日記を参照)。銀行や郵便局が，どうしてもけばけばしくなりがちなお土産物店にまじって，懸命に古さを演出している。被写体としておもしろそうであるが，まだ傘が必要なことや人ごみが激しいことと，用意したフィルムが３枚しかないことから，なかなか撮ってみようという気にならない。そんな通りの途中に，なぜか碁会所があった。この強烈な存在感がようやく，撮りたい気持ちを喚起してくれた。

Ernemann HEAG 0, Ernemann Detektiv Aplanat 10.5cm F6.8, FUJI instax mini monochrome

ようやく傘が必要ない状態になったので，もう一度，神宮のほうへ向かう。1枚くらいは，神宮らしいところも撮っておこうじゃないか。

Ernemann HEAG 0, Ernemann Detektiv Aplanat 10.5cm F6.8, FUJI instax mini monochrome

　「チェキ」フィルムはISO800相当なので，シャッター速度の速いほうが1/100秒までしかないHEAG 0には，今日のようなお天気のほうが，好都合である。
　昨日はまだ，曇り空とはいえ明るかったので，ND8フィルタをレンズにあてがって撮ったものだ。

Ernemann HEAG 0, Ernemann Detektiv Aplanat 10.5cm F6.8, ND8, FUJI instax mini monochrome

たぶん，「チェキ」カメラで撮るほうが，シャープできれいに見える写真になっただろう。
　だが，古いカメラと「チェキ」モノクロームの組みあわせは，古書店などで見かけることのある，古い絵葉書のような雰囲気の写真になるようだ。これは，似合う被写体が限られそうだが，おもしろい。

ところで，さきに「用意したフィルムが３枚しかない」と書いたのは，HEAG 0で使えるプレートホルダを3枚しか入手していないので，フィルムをあらかじめ装填しておけるのが3枚しかないということである。フィルムの詰め替えをするためにチェンジバッグを用意していたのだが，さすがにそこまで持ち歩く気にはならず，詰め替えや現像処理は，移動中の車内やホテルなどでおこなうことになる。
　HEAG 0とプレートホルダ3枚程度だけであれば，じつにコンパクトな中判サイズの撮影環境が持ち運べるのだが，実際にはそれを支えるために，チェンジバッグ(そこそこ重いし，なによりかさばる)，「チェキ」本体なども必要になる。旅行先や出張先などで使いたいときは，そこも計算にいれておこう。「よい出会い」があれば，プレートホルダももう少し増やしておきたい。